仲麿ゼミナールのHP講座

どう教える、中学受験の算数

東京都練馬区 仲麿ゼミナール
   HP講座 中学受験の算数
  担当 藤 井 直 行


第2回 文章で書いて身につく「つるかめ算」

      〜面積図で教える前に、文章による解き方を教えてください〜


図1

 第2回目の今回は、有名な?つるかめ算についての指導についてお話していきたいと思います。中学受験に出題される特殊算の中でも、これほど世に名前が知れ渡っているものはないでしょう。最近では、就職試験(SPI)などにもつるかめ算が出題されるようで、中学受験に無縁だった高校生・大学生諸君も就活の時期になると一度は耳にするはずです。「名前は聞いたことがあるが、どういう解き方・考え方なのか・・・」という保護者の方もこの講座でしっかりマスターしてください。



1−1.つるかめ算とは何か

 つるかめ算とは、算数の問題の解き方のひとつで、「つる」と「かめ」が合わせて何匹いるかと、足の数の合計がわかっているとき、つる(足2本)とかめ(足4本)の足の数の差を利用して、それぞれが何匹いるかを求める解き方です。
 中国の「キジ」と「ウサギ」の数を求める問題がこの解き方の始まりとされ、日本では、これが江戸時代におめでたい「つる」と「かめ」に置き換えられて「つるかめ算」という名前になりました。
 つるかめ算といっても、実際に「つる」と「かめ」の数を求めなさい、という出題はほとんどありませんが、考え方・解き方がさまざま場面で応用がきくものなのでしっかりマスターさせましょう。
 つるとかめの例えは、絵的にも解き方が印象深く覚えられるので、その考え方を「つるとかめ」の問題で紹介します。

【例題】 つるとかめが合わせて10匹いて、足の数の合計は32本です。つるとかめはそれぞれ何匹いますか。



1−2.まず絵を描いて、つるかめ算の考え方を理解させましょう

 つるかめ算の考え方を理解させるためには、実際につるやかめの絵を描いて理解させるのが一番です。実際、授業でも生徒たちから「先生は絵が下手だ」とののしられながも、絵を描いて説明しています。実際にかめを10匹書いて、それをつると1匹ずつ交換して足の数を減らしていくと、生徒たちは完全に理解してくれます。



1−3.つるかめ算の解き方・考え方

@ まず、10匹が全部かめだと考えます

図2

 するとかめの足は4本ですから、足の数の合計は、4×10=40本になります。


A ところが実際は、足の数の合計は32本ですから、40−32=8本多くなってしまいます
  この差の8本は、つるの分までかめとして数えたから生まれたものです。


B ここで、かめとつるを1匹ずつ取りかえていきます。かめとつるを1匹取りかえると足の数の合計は4−2=2本少なくなります

図3

  もう1匹取りかえると、6−2=4本となります。

図4

  これを0になるまで繰り返します。

図5


C 8本多い分を0にするには、8÷2=4回つると取りかえればよいのがわかります。
  かめをつるに4回取りかえたので、つるは4羽いたことがわかります。もちろん、かめの数は10−4=6匹です。答えは、つる4羽、かめ6匹です。



 以上がつるかめ算の解き方・考え方です。ひとつの式にまとめると、次のようになります。

つるかめ算をひとつの式にまとめると
 (全部かめとしての足の数合計―実際の足の数の合計)÷(足の数の差)
 =つると取りかえる回数(つるの数)

  (4×10−32)÷(4−2)=8÷2=4



1−4.定着をはかるには、文章にして書いて解くのが一番。

 長年、中学受験を指導していると理解させるための例題はもちろん、指導の順番が大切なことがわかってきます。ひとつの式にまとめてしまうと簡単に見えるつるかめ算ですが、はじめはなかなか馴染みにくいようです。いきなり面積図で指導している参考書などもありますが、その前に少し面倒で時間もかかりますが、文章で書かせて何度も解かせた方が子どもたちの覚えがよいようです。
 では、どんなふうに文章で書かせていったらよいのかをお話します。はじめは、次のような手順で子どもたちに写してもらいます。数字だけをあてはめて、その他の文章はそのまま写させます。



1−5.つるかめ算の解き方の手順

@ ○匹全部かめだとすると足の数の合計は○×4=□となる。
A ところが実際は△本だから、□―△=◎本多くなる。
B これはつるの分までかめとして数えたから。
C かめとつる1匹取りかえるごとに4−2=2本ずつ減るから、◎本多い分を0にするには、◎÷2=■回つると取りかえればよい。

 この手順を類題で5、6回練習することで、考え方は必ず身につきます。文章ごと書かせるのは、考え方を「刷り込む」ためですから、ここは省略させないでください。
 保護者の皆様も、次の問題を解き方の手順にしたがって、文章で書きながら解いてみてください。


 (類 題)
 つるとかめが合わせて12匹いて、足の数の合計は38本です。つるとかめはそれぞれ何匹いますか。

@
A
B
C
答え つる(    )羽、かめ(    )匹



 いかがですか。うまく解けましたか。念のため、解答を以下に記しておきます。

@ 12匹全部かめだとすると足の数の合計は12×4=48となる。
A ところが実際は38本だから、48−38=10本多くなる。
B これはつるの分までかめとして数えたから。
C かめとつる1匹取りかえるごとに4−2=2本ずつ減るから、10本多い分を0にするには、 10÷2=5回つると取りかえればよい
答え つる(5)羽、かめ(7)匹


注意:最後の10÷2=5のとき、必ずそのあとに続く「〜回つると取りかえればよい。」という文章を書かせてください。ここを書かないと、5がかめの数だと勘違いしてかめの数を5匹と答えてしまう間違いが多いからです。



1−6.つるかめ算を使う問題例

 実際にはつるとかめの数を求めるような問題はあまり出題されませんが、では「つるかめ算」の考え方は、どんな問題で使えるのかを次の例題で試してみましょう。

【例題】 1個80円のみかんと1個100円のりんごを合わせて40個買い、その代金を3700円払いました。みかんとりんごそれぞれ何個ずつ買いましたか。

 ここでは1個の値段が高い方のりんごが「かめ」で、安い方のみかんが「つる」と考えて解いていきます。前述の解き方の手順に従って解いてみましょう。

@ 40個全部りんごだとすると代金は40×100=4000円となる。
A ところが実際は3700円だから、4000―3700=300円多くなる。
B これはみかんの分までりんごとして数えたから。
C りんごとみかんを1個取りかえるごとに100−80=20円ずつ減るから、300円多い分を0にするには、300÷20=15回みかんと取りかえればよい。
 みかんが15個だから、りんごは40−15=25個になります。
答え みかん15個、りんご25個


 もうお解りのように、つるとかめを、みかんとりんごに変えただけでまったく同じように解けてしまいますね。



1−7.急がば廻れ。しっかり馴染むまでは、解き方を文章で書かせてください。

 自分の考え方や解き方を文章にしてまとめることは、算数の力を飛躍的に伸ばしてくれます。つるかめ算の解法を文章で説明させることにより、子どもたちにまた新たな力がつくはずです。
 面積図による解法と連立方程式の関係については、次回お話させていただきます。
 では、第2回目はここまで。



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